2016年9月17日土曜日

フランスの国営メディア 市民への憚りは危険

(パリ=飛田正夫 日本時間;‎‎‎17/‎09/‎2016-07:41:18)ジュッペとサルコジの対立点 「幸せの予言者」と「不幸の予言者」という記事(http://franettese.blogspot.fr/2016/09/blog-post_33.html
を14日にアップしたのですが、その後も、この両者の応酬事件がメディアの話題になっているので、この背景にある国営メディの憚りというものを少し考えてみました。
フランスの現在の国営メディアにはサルコジの息が強くかかっていて影響が非常に強い(サルコジのメディア弾圧が暴露 https://franettese.blogspot.fr/2016/09/blog-post_8.html )
という事です。そこから話しは出発します。
ニュースだけを一日中報道しているテレビ(BFMTV)の有名アナウンサーのルース・エルクリエフ(Ruth Elkrief)さんの16日の番組でも、この二人の応酬が取り上げられて話題にされていました。いつもメディアでサルコジの陰に隠されているジュッペなのだが、これが反撃に出る作戦に出たとし、サルコジの馬鹿さ加減が顕れていると見ているようです。しかし私は、いつもテレビやラジオで気になるのは報道の内容というよりも、ジャーナリストやアナウンサーがどう解釈し評価しているかに視聴者は大変に影響を受けて政治家を評価する材料にしているのではないかということです。これについてのメディア研究などがあるのかも知れません。
また15日深夜のフランス国営放送テレビA2の番組では、2017年の仏大統領選挙の「共和党」(LC)内代表者を決める予選選挙(プリメール)での、主張講演のトップバッターとしてサルコジ前大統領が2時間に渡るインタビューに出席していて、市民の代表からは、散々に論破されて顔が崩れ眼を剥いて八法塞がりに追い詰められていた。そのサルコジに助け船を出したのが横にいた3人の司会者や調査会社の男性でした。
見ていて本当に恥ずかしい。サルコジよりもジャーナリストがサルコジをかばって必死になって援護している。これは他所の時代や他所の国ではありえないことだと思います。
フランス国営放送テレビA2や国営ラジオ・フランス・アンフォでは、一回のニュースに何度ものニコラが出て来ることです。サルコジのことではないのです。ジャーナリストの名前です。ルポルタージュの場合でも取材先の現場の証言を求めるのにまたニコラが出て来るといった具合で何回もニコラができ来ます。フランス人の名前でこんなにもニコラが多いものなのか?しかもジャーナリストにニコラが多いのには驚きます。フランスに住んでいる方は国営放送を注意してみてください。
頻繁に出て来るのはニコラ・ペイヤー、ニコラ・ポワンカレ、ニコラ・シャトーヌッフですが、彼らが出演するたびに最低4,5回はニコラと声が掛かる。こういう公的報道機関での繰り返しがどんな宣伝効果があるのか?意識してやっているとしか思えないのです。これはかなり現実的効果を狙っている。忘れられないようにする前に、無意識の世界での恭順性を狙って呼ばれているようで気になるわけです。
先ほど出て来た調査会社の男性も、彼がサルコジを迎えてのインタビュー討論で、テレビ視聴者からネットで同時質問して討論結果の講評を番組の最後に述べるわけです。(これは2002年のサルコジとセゴレーヌ・ロワイヤルとの仏大統領選挙のデバ(論争)でも同じで、ジャーナリストが講評を述べてあれこれ良し悪しを評価している。但し、仏大統領選挙での投票は、この特定のジャーナリストの講評の後で選挙民である視聴者各自によってなされるわけだが、ジャーナリストの責任は皆無なのです。これは本当に恐ろしい情報捜査のやり方かもしれない。誰かがやらせているのかもしれない。)
23時過ぎになって、ようやく重要な事件の質問があった。
それは既に(キャメロン前英首相の サルコジ要請のリビア空爆は失敗 http://franettese.blogspot.fr/2016/09/blog-post_15.html)で、先日書きましたが、キャメロン前英首相が2011年のサルコジに誘われて一緒にリビアの独裁者カダフィ大佐を空爆して、多くのリビア市民が死亡しリバアの経済を破壊してしまったという事件で、このことで、英国議会は、リビア社会の転覆を正確な状況を説明する材料も持たないままに、性急に判断して空爆を行いリビアを完全破壊したとして、その誤った認識に責任があるとして、当時のキャメロン首相の判断を誤っていたと批判したわけです。その責任は当然のことキャメロンを誘ったサルコジにあるわけですが、テレビ司会者はこの英国議会の批判があったことをフランスのテレビ視聴者には何も説明なして、リビアのことをどう思っているかとサルコジに聞いたわけです。
この英国議会のニュースは、フランスの国営放送では、一部の左派系新聞を除いては殆ど報道されてなかったので、多くの市民はこの事件を理解している者は少なかった筈です。しかもこの番組の終わり近くになってからこれが質問されたのです。サルコジは当然のこと自分が悪かった、判断を誤っていたとは言わなかったのです。
そのサルコジの話しがまだ終わるか終わらないかの内に、例の世論調査会社から送られてきている男性が会場の奥の方から視聴者の意見の総計だとして姿を現して来て話し出したのです。
この男の話など全然興味ないのだが、一番大事な市民が知らなければならなかった事件の一つが、このキャメロン首相絡みのニ三日前の事件ではなかったのか。サルコジはここでも逃げ道が準備されていたようである。この男が登壇した時には、その視聴者の反応はまだネットでは集計中でなされてなかったようだ。この地世論調査会社の人は、一体なにを語り得たのであろうか。