2016年9月9日金曜日

オランド仏大統領講演 サルコジの出馬を想定し 社会モデルを語る

(パリ=飛田正夫 日本時間;11:41:54)8日午後、フランソワ・オランド仏大統領は「テロリズムを前にした民主主義」という演題でパリ17区のワグラム会議場で1時間以上にわたる講演をした。この中で民主主義の自由という価値がフランスにはあってこれが文化と人間を破壊するテロリストが標的にする原因であると指摘した。テロリストはこのフランスの価値を分離する計画的なイデオロギーを持っていてこれが我々と逆だからであると話した。自由は普段は空気のように感じないものだが、空気が無くなると不自由を感じるようなものだとある哲学者を引用して話した。移民や難民が生まれた所に国籍権が発生するとする「出生地権」、「家族呼び寄せ権」を認め、「市民的人権」「米国のようなグアンタナモを作らない」、「宗教・表現の自由の保障」を国家がする。「恐怖に油を注いで挑発することは簡単なことだ」などと話し、どれもサルコジの主張と正反対のものとなっている。そこから明らかにオランド大統領は、2017年の仏大統領選挙への出馬の意思が伺える。

オランドはまだ社会党(PS)内大統領選挙の代表者を決める予選選挙(プリメール)への参加宣言もしてないが、もし「共和党」(LC)のプリメールでサルコジの出馬が決まれば、対候補となり勝てるというような自信ある話し方であった。もしもボルドー市長のアラン・ジュッペ仏元首相がLCから出馬となれば、勝ち目はないと考えているところから、明快な出馬宣言はまだ控えているのだろう。

しかし講演全体は、オランドが社会党から選出された大統領として話していて、勝敗は別にしてフランスの将来を託した遺言のような意味も言葉の雰囲気からは伺えるものであった。非常に暖かな人柄がでていて何故人気がないのか理解できない。フランス人の多くが金のことだけしか考えないようになってしまったとは思われないのだが。

オランドは、イスラムの女性の海水着でこれを取り締まるべくサルコジが騒いだように、法律を変えるのではなく、今ある法律を守り適応することが大切だと話した。イスラムを取り締まる法を作るのは誤りなのだとサルコジの名を出さないがこれを暗に批判している。

おそらくはオランド大統領の次の言葉は世界のどこの大統領も口にできないのではないかと思う。それは「フランスはここにいる者は、どんな違いもなく同じ権利と義務がある」と話したことだ。そしてオランドは「我々の価値である民主主義の自由がテロに勝つ」「フランスの思想は絶えず発展し、これがフランス人という意識を超えるのである」と、世界のユニバーサルな価値がフランスにあって民主主義的な社会のモデルになってゆくと話している。

だから「フランスは思想で、未来なのである」そして、サルコジを指して話したのではないかとここでも思える話しをした。「ナショナリズムや全体主義、極右主義によるフランスの損傷を許してはならない」と、非常に重要なことだ。最後に、「ヨーロッパの責任を回避してはならない。我々がフランスでこれでイスラム主義者に勝ってゆくのです」話は長かったが、この人は政治家というよりも哲学者という感じがするのだ。