2016年10月25日火曜日

ネオナチの台頭を恐れ オーストリア政府はヒトラーの生家破壊を決定

(パリ=飛田正夫 日本時間;‎25/‎10/‎2016‎‎-03:09:06)オーストリア政府は長い論議の末に、10月17日、北部ドイツ国境の町ブラウナウ・アム・イン(Braunau am Inn)の中心街にある17世期に建てられたヒットラーの生家を破壊することに決定したと発表した。理由はネオナチの温床となることを恐れたからだという。オーストリアのディア・プレス(Die Presse)によるとヴォルフガング・ソボトカ(Wolfgang Sobotka)オーストリア内相はその建物の跡地には公官庁の建物を立てることになるといっている。ナチス巡礼の対象として危険が予測される総ての家屋と物件に対し、オーストリア政府がそれらを強制没収するための法的枠組みをこの7月にすでに整えている。この計画を実現するのには、オーストリア政府はこの家の強制買収をすることが必要になっている。

ヒトラーはこの黄色い壁の家で1889年4月20日に誕生している。2014年11月に、オーストリアの週刊誌フロフィール(Profil)は、1972年以来チス・ドイツの巡礼地化することを阻止するために国家が持ち主に月額4700ユーロ(約70万円)の家賃を支払っていたことを暴露していた。建物はハンディキャップ施設として使われることで、1970年代に政府との間で契約が交わされていたが、家屋の施設に不可欠な改修許可を家主が拒否して、以後は施設は封鎖状態であった。2011年からは誰も住まなくなっていた。しかし最近の5年間は家主のポメー婦人はこの建物の歴史的修復計画に力を注いでいて、ヒトラーの部屋の訪問を組織化するなどしはじめた為に、施設の使用で政府内でも論議が湧きあがっていた。

ゲルランデ・ポメー(Gerlinde Pommer)婦人の家族は1930年頃からヒトラー生家の役世紀に渡る持主であった。家屋は1938年にナチスの圧力によって莫大な金額で譲渡されたように見せかけてあり、戦後に詳しい調べもなく国から無償返還されていたという。
日本の軍国主義を推進したA級戦犯と共に不正な戦争を遂行した戦没者の英霊が奉られているとされる靖国神社は、海外の動きとは逆に今も日本の自民党の政治家らによって参拝の対象とされている。ナチスドイツの独裁者ヒトラーの生家や、1989年に逮捕され直ぐに処刑されたポーランドの独裁者ニコラエ・チャウシェスクとその妻エレナの墓などは、ネオナチや右翼の英雄として奉られ、巡礼地となることを回避するために、遺体もニセの偽名で秘密に埋葬して隠してきた。
これは墓荒しが問題だというのは表面的な言い訳にしかすぎず、実際は独裁者のイコンとなり巡礼地としてナショナリスト台頭に利用されることを危惧しているのである。
この意味で、韓国や中国政府が、日本の首相や閣僚が靖国神社や伊勢神宮への参拝を非難するのはしごく当然のことなのである。オーストリア政府のように戦争犯罪者を奉った神社や神宮を破壊すべきだということだ。ヒトラーや東条を神として奉った神殿に参詣することは欧州でも日本でも許されないことである。
すでに秘密裡にレオンディンク(Leonding)の町にある集団墓地からはヒトラーの両親の遺骨が掘り起こされて処分された。ドイツの独裁者ヒトラーにまつわる忌まわしい歴史の記憶の回顧と復活を阻止する一環として最近のオーストリア政府の政策が、成功しているという。
【参考記事】
http://www.huffingtonpost.fr/2016/10/17/autriche-va-raser-maison-natale-adolf-hitler/
http://www.francetvinfo.fr/monde/europe/le-gouvernement-autrichien-va-detruire-la-maison-natale-d-hitler_1876817.html
http://www.20minutes.fr/monde/1946839-20161020-autriche-policier-condamne-9-mois-prison-sursis-avoir-crie-heil-hitler
http://www.europe1.fr/international/maison-natale-dhitler-lautriche-va-lancer-un-concours-darchitectes-2876342
http://www.lemonde.fr/europe/article/2016/10/17/l-autriche-veut-raser-la-maison-natale-d-hitler_5015383_3214.html