2016年11月22日火曜日

フィヨンの勝利は サルコジ登板回避が目的 仏プリメールの400万票は仏国民の良心

(パリ=飛田正夫 日本時間;‎‎‎22/‎11/‎2016-08:41:25)20日に行われた2017年の仏大統領選挙のLC内代表者を決める予選選挙(プリメール)では、思いの他にフランソワ・フィヨン元首相(共和党LC)が善戦した。ボルドー市長のアラン・ジュッペ仏元首相は第二位で、サルコジは敗北してフィヨンとは20%も溝を空けて第三位。サルコジはLC内代表者を最終的に決める11月27日の最終予選候補者選考(プリメール)には出られなくなった。その為にサルコジは今回20日のプリメール第一次選挙の結果が完全に出揃う前の時点で一早く敗北宣言を出したのである。そこでサルコジは、これからは家族の為に時間を多く使い、公的なものを少なくするなどと話している。「共和党」(LC)の代表に選ばれなかった事で、サルコジが若し2017年の仏大統領選挙で敗北したのならば2022年の仏大統領選挙には出馬しないと宣言していたことが現実化してしまったということだ。これでサルコの政治生命は終わったということになるだろう。


「何故フランス人はサルコジが嫌いなのか」というジャーナリストの疑問があったが、これは一番大事な問題を指摘している。それでサルコジの票は少なかったわけなのだ。フランス国民に嫌われたので敗れたということを正視すべきなだ。それを今回サルコジは理解したのだろう。


サルコジは人種差別的怨念を焚きつけそれを政治に利用する人であり、移民排斥主義者でもある。しかしそういうトランプ的な政策がアメリカはともかくも、フランスでは失敗したのだというのが今回の大事な教訓です。


この人権思想を失った人種差別とイスラム差別の尊厳のない移民排斥思想のサルコジを「共和党」(LC)党員以上のフランス人が、つまり400万人ものプリメール投票参加者が20日にサルコジを追い落としたのだと見るのが正しいのです。第三番目にいたフランソワ・フィヨン元首相がこの1週間で、ジュッペやサルコジを追い越して断トツの44%以上もの得票率を得たのは、サルコジが大統領選挙に勝ってフランスをかき回す三面記事の政治をされることを怖れる勢力だったのだと見るべきなのだと私は思います。ですから、フィヨンに集まった票というのは、サルコジの票を少なくしている票なのです。とにかくサルコの登板を回避しようとするフランス人の良心だと考えるべきだと思います。サルコジは引退どころかこれからは、彼の言う公的な裁判が10ほども待っているのです。これらの裁判は大統領選挙で勝てば追求権が無くなるわけでしたから、サルコジはどうしてでも大統領選挙に勝たなければ、恐ろしいことになり、それで現在の最悪の状態になったわけですが、サルコジにとっては自分を守るためには今となっては、ジュッペよりもフィヨンが大統領選挙に勝つことが有利だと考えて、今度のフィヨン支持の指名を出したのだと思います。


しかしながら、サルコジを怖れ嫌った人たちがフィヨン支持に回ったということを忘れてはならないと思う。サルコジがいくらフィヨンを指名しても国民は必ずしもそうではないということです。
今回のフィヨンの勝利は彼を大統領に選ぶためのものではなくて、サルコジ回避の為の「共和党」(LC)を中心とするフランス右派系国民の政治的良心の感覚から来たのだということなのです。
フランス国民全体ではというとフィヨンでは右派は左派候補者に勝てないのです。ボルドー市長のアラン・ジュッペ仏元外相・元首相の方が人気があるのです。ですから来週には最終的な、LC内代表者を決める11月27日の予選選挙候補者選考(プリメール)では、右派市民はフィヨンに投票しないと考えられるのです。


体制メディアはフィヨン支持を宣伝している。このことで今回のプリメールの特徴であった400万人という数の投票者は、「共和党」(LC)の党員をはるかに超える数であった。この中味を考えると、党員でもないフランス人が何故にこの右派のプリメールに投票したのかという疑問に解答が出るわけです。メディアはこのことを知っていながら、これを説明しようともしない。それはそこにフィヨンの問題とサルコジの問題が同時に存在しているからなのでそれを明かしたくないのです。別の言い方をすると二人とも空人気だということです。


世論調査会社は今回も全くと言ってよいほど、予想は的違いであった。400万人という数の投票が動員される事など全然予想してなかった。この数の中には極左派も右翼もいた。その人達が今のサルコジ「共和党」(前の国民運動連合UMP)党首で大統領選挙候補者の台頭を恐れ、それを支持するサルコジ体制のメディアの予想を裏切って、サルコジを嫌う「共和党」(LC)内部の勢力の数字に上乗せして見せたということである。
メディアはそれが言いたくないし、知られたくない。しかし正直な人がフランス国民の目には評価され残ったということだ。そこを忘れ隠した論議が今の所は非常に多いようだ。サルコジの敗北宣言はフランス国民が彼の誤魔化しの三面記事的政治を見破て、フランス社会を一先ずはサルコジから救ったのだ。