2016年11月4日金曜日

第2回プリメール論争デバ サルコジが満身創痍の批判 ジュッペの人気は更新

(パリ=飛田正夫 日本時間;‎04/‎11/‎2016‎‎-09:51:04)11月11日夜8時半から2017年の仏大統領選挙のLC内代表者を決める予選選挙のプリメールのデバ(論争)の第二回戦がテレビ(BFMTV)で、約く3時間に渡って開催された。第一回めと同じ登壇者だが籤引きで壇上に並ぶ順序が変わっている。左端からアラン・ジュッペ現ボルドー市長(元首相)、フランソワ・フィヨン元首相、ブルノ・ル・メール元漁業大臣、共和党№2であったナタリー・コシュースコ・モリゼ元環境大臣、ニコラ・サルコジ前大統領、キリスト教派代表ジャン・フレデェリック・ポワソン、モー市長で前国民運動連合(UMP))議長のジャン・フランソワ・コッペが参加した。壇上の周囲四方を聴衆者にかこまれてのデバを繰り広げた。司会はテレビ(BFMTV)の有名アナウンサーのルース・エルクリエフ(Ruth Elkrief)さんらが担当した。ジャーナリストのアナ・カボナさんは、今回は前回にくらべ明確になったのは、サルコジ攻撃がほぼ他の候補者全員の一致となったことだと指摘した。特にナタリー・コシュースコ・モリゼのサルコジ攻撃は的を得ていて強力であった。サルコジが満身創痍の批判をうけていて、ジュッペの最高人気は今回も更新した。サルコジは必要ないという動きが今回のデバでは鮮明化したとカボナさんはいう。後一回残っている第3回目のデバで、この攻撃の前線がどう変化するのだろうかと話した。

これは少し前に元高等教育相を担当しイルドフランス地方議員でもある日本語もしゃべるヴァレリー・ペックレッスさんが、サルコジやフィヨンを退けて大統領選挙へのプリメール選出ではジュッペを支持する宣言を出したのと連動している傾向になっている。
その為に今後はジャーナリストがサルコジ贔屓を止めることになるかもしれない。その分岐点となる今回のデバだともいえる。サルコジが長い間主張してきた社会党(PS)もペンの極右翼党国民戦線(FN)も支持しないとする「ni-ni」作戦が、選挙戦で結局はFNの勢力を増長させてしまったという認識は登壇者のサルコジ以外が認めるているようだ。その責任がサルコジにあったことが厳しく指摘された。

最近出版されたパトリック・ビュィソン氏の書いた本「La Cause du peuple」(Perrin社)の中で、サルコジが2012年の仏大統領選挙前にペンFN総裁に会う準備があると顧問役のビュィソンに漏らしていたことばが暴露されていたが、それと同様にカトリック極右派代表ジャン・フレデェリック・ポワソンがマリヨン・マルシェル・ペン(FN)に接近していたことなどが問題視された。

このことに対し、バスク地方のポーの市長モデム(民主運動党)議長であるフランソワ・バイル氏に対して、サルコジがこのバイルは2012年の仏大統領選挙では自分に投票しないでオランドに投票した裏切り者だと激しく批判していたことに絡んで、今回のデバでは、ジュッペが切れの良い裁断をしてみせた。(サルコジら)は(LC)に近いバイルと共闘するのは駄目だと批判するが、FNのマリオンと組みすることはよいと考えているのかと淡々を話した。みんな返す言葉がなくなり一瞬静まり返った。

警察の正当防衛は何処までをいうのかでは、考え方が異なりサルコジは相手が銃を手にしたら、その時点で警察の判断で撃ってよいと現行の相手が撃ってからなら正当防衛になるという判断を否定した発言をしている。まるでこれは西部劇での抜き撃ちの決闘試合の場面になっている。そういえばサルコジが大統領になってジャーナリストを幌馬車に山なりに積んで、当人はカーボイ帽子を被り白馬に跨り、カマルグの原野を輪を作ったロープを空に振りまわす姿を報道させて大変に悪評を得た有名な写真を思い出させる。

ポワソンは教育は基本的に学校の問題ではなくて、学校は委託されているので会社への就職の為ではないと他の立候補とは異なる意見をだしていた。
しかしポワソンはかなりカトリックの保守主義者の考えをしていて、保安の為の警察増員数は他のどの立候補者よりも多い数を上げていた。

デバの後でいつものようにジャーナリストが数人集まって意見をいうのが定例なのだが、今回は多くのジャーナリストはサルコジの孤立化が際立ったことを反対する者はいなかった。
テレビ放映中に985人のデバ視聴者サンプルを基にした調査会社Elabeの結果が発表された。その数字には疑問が残るが、それによるとフランス人全体では説得力があったとする人は、ジュッペが34%、サルコジが24%でフィヨンは15%だとしている。しかし話の内容のことではなくて、この数字はあくまでも人気度の事だと考えられる。「共和党」(LC)支持者ではサルコジが31%でジュッペは28%と逆転している。今後は、共和党支持者でも仏大統領選挙での勝利を考えるとジュッペの方がサルコジよりは10%も高いことから、ジュッペ支持で「共和党」(LC)内の動きが固まっていくと考えられる。

大事なことは今回のデバではカトリック極右派代表ジャン・フレデェリック・ポワソン氏がジュッペに質問したことで、ジュッペはサルコジにプリメールで負けたのならサルコジを支持すると明快に返答した。これにはジュッペがフランソワ・バイルのモデム(民主運動党)議長と組んで同氏を応援するのではないかとの心配があったようだ。むしろサルコジがジュッペにプリメールで負けたことを考えるべきである。サルコはジュッペを支持しないで、あくまでも仏大統領選挙に立候補する可能性は多い。これは違反だがプリメールにはもともと賛成ではないということがあって、アンリ・ゲイノ氏が既にその前例を今回のプリメールで落ちながらも、2017年の仏大統領選挙への立候補を宣言しているからだ。

ジュッペはフランソワ・バイルのモデム(民主運動党)議長の支援を得た事に関し、同氏を首相にすることは考えてないと今回話し、「共和党」(LC)から首相は指名するとはなしたことで、今後は更にコッペやフィヨンやメールのジュッペ支持が強まる可能性は高くなったと見た方がよい。事実今回のデバではサルコジ批判は蜂の巣を引掻いたように起こったが、ジュッペ批判は誰もしていなかったことが特筆すべきだろう。それ以上にジャーナリストの態度が大きく変化してゆくのはたしかだ。